製造業 特定技能 協議会に加入できない5つの落とし穴

製造業の加入申請で初回で審査に通る企業は1割以下と言われています。この数字からも審査ハードルの高さが分かります。

実はこの審査に通らない企業は似たような「5つの落とし穴」(間違い)にハマってしまっていることがほとんどです。今回はそんなよくある間違いについて解説します。

はじめに:なぜ1割以下しか通らないのか?

実は製造業以外の業種ではここまで協議会加入のハードルは高くありません。なぜ製造業ではこれほど厳しい審査が行われのでしょうか?

その理由は2つあります。1つは製造品目によって特定技能を受け入れ可能かどうかが分かれること。例えば外食では「外食」と一分野しかありません。しかし製造業では受入可能な産業分類が製造品目によって大きく変わります。「製造業」と一括りに簡単には許可できないのです。
多種多様な製造品目のどれが受入可能で、どれが不可能なのか。産業分類の確認が加入申請で厳密に行われることが厳しさの一因となっています。

受入可能な産業分類は製造品により細かく決められいている
出典:工業製品製造業分野の特定技能制度について(2024年8月経済産業省)


また2つ目の理由としては適正な会社のみが外国人を受け入れられるようにするためです。
製造業は特定技能の業種分野の中でも受け入れ予定人数が多い分野になります。また生産現場では労災など危険と隣り合わせである可能性もあります。
その中で営業実態のない“ペーパーカンパニー”や、外国人を紹介するだけの“ブローカー”のような企業が受け入れられるようにしないため、営業や製造実態が厳格に問われています。

特に審査では非常に多くの加入申請がある中で、限られた情報量の中で上記を判断する必要があります。「判断をつけるための情報がわかりやすく記載されているか?」「それを裏付ける証拠があるかどうか」が大きなポイントになるのです。

 


入会審査で見られる3つのポイント

よくある不合格の理由

それではどんな理由で審査に通らないのでしょうか?よくある不合格の理由としては下記の3点です。

  • 申請している産業分類が適格でない

  • 製造品や営業の実態を示す資料が不十分

  • 会社情報が正確でない

チェックされる3つの視点

上記を言い換えると、加入審査では下記の点が重視されます。

  1. 申請時の産業分類が適切か?受け入れ対象の分類か?
    まず申告時に申告する産業分類が本当にその会社にとって適切な産業分類である必要があります。この点を、製造品や完成品などの諸情報から厳しく判断されます。また当然、当該企業の産業分類が特定技能の受け入れが可能な分類でなければ、審査は通りません。

  2. 実際の製造・営業実態を示す証拠があるか
    上記の製造や営業の実態を示すためには製造品や完成品の写真や納品書など、裏付け資料が必要です。審査官がきちんと判断できる証跡があるか?が問われます。

  3. 申請内容と公表情報に整合性があるか
    営業実態を示すのは契約書等だけではなく、申請内容と公表されている内容などからも判断されます。申請書と登記情報、ホームページなどが一致しているかが重要です。

産業分類の判断には出荷額等が発生していることを証明することが求められる
出典:工業製品製造業分野の特定技能制度について(2024年8月経済産業省)

上記のポイントを踏まえ、それぞれの「落とし穴」についてみていきます。


落とし穴①:業種のズレで不合格に

特定技能制度では、「製造品目」とそれに紐づく産業分類によって、受け入れ対象かどうかが決まります。
技能実習の受け入れ実績がある企業でも、産業分類が違えば特定技能の対象とならないケースがあり、不合格になることも

たとえば、同じ「プラスチック製品の加工」でも、最終製品の種類や用途によって分類が異なり、制度対象でない業種に該当してしまうケースがあります。
また、自社で判断できずに「とりあえず出してみる」といった申請をしてしまうと、審査で弾かれてしまうリスクが高まります。

産業分類は日本標準産業分類(総務省)に基づいており、分野ごとに細かく分類されています。申請時に自社に最もあった産業分類で申請すべきですが、その自社の産業分類の判断はさまざまな判断軸があり容易ではありません。制度の対象外となりうるグレーゾーンも存在し、判断に迷う場面も多くあります。
多くの企業が自社の産業分類を誤って判断して申請してしまうことで不合格になってしまうことが非常に多いのが現状です

産業分類の判断は企業側でも判断しづらいことが多々あり、多くの質問がされている
出典:工業製品製造業分野の特定技能制度について(2024年8月経済産業省)


落とし穴②:製造実態の証明不足

審査では、1) 申請企業の産業分類の判断 及び 2) その申請内容が実態に則したものであるか?を申請テンプレートの文章と写真で判断します。

ただし、単に写真や納品書を提出するだけでは不十分です。多くの企業が十分に製造品目や実態を証明できないことで不合格となってしまっています
審査官がその情報を見て「どの製品を」「どこで」「どういう工程で作っているのか」をイメージできるよう、資料に説明や補足を加える必要があります。現場の写真には、製品名や製造工程のキャプションをつけ、書類には製品の特長や取引先情報など、具体的な内容を書き加えると効果的です。

また、「自社製品を持たない請負製造」の場合、どのような契約に基づいて、どの会社の製品を製造しているのかを明確に示す請負契約書の提出が必須になります。この契約書も、製造品目や委託元企業名、工程の範囲などが具体的に記載されていることが望まれます。

必要な書類の例:

  • 納品書や請求書(発注元や製品名が分かるもの)

  • 設備や製品の写真(製造現場の様子が伝わるもの)

  • 請負契約書(他社製品を作っている場合は必須)

  • 製造工程を説明する資料(例:製造フロー図やパンフレット)

現場の状況を正しく示す資料がないと、審査は通りません

出荷実績を示すための資料は抑えるべき点も多く注意が必要


落とし穴③:書類の不備や抜け

書類の不備や提出漏れは、協議会の審査で差し戻される大きな原因です。前述の通り加入審査は基本的に書類で判断されます。どれだけ実態がしっかりしていても書類が不完全であれば審査は通りません。

審査担当者は、提出された情報だけをもとに判断するため、少しのミスや漏れでも「信頼性が低い」と見なされるおそれがあります。
「請負契約書がない」「製品説明があいまい」「同じ工場名でも表記がブレている」など、細かい点まで押さえていない場合、大きなマイナスになります。

また、書類の記載内容が最新でない場合や、複数の書類間で整合性が取れていない場合も不備とされる可能性があります。最新のデータや正式な契約書を準備することが非常に重要です。

ありがちな例:

  • 書類の記載内容にバラつきがある

  • 必須書類の一部が未提出

  • 契約書が存在しない(口約束)

  • 製品名・製造所名の表記ゆれ

  • 登記情報と提出書類の内容にズレがある


落とし穴④:会社情報の不整合

協議会は、「実際に存在している工場か」「稼働実績があるか」を厳しく確認します。実際には活動していない工場や、事実と異なる情報を届け出ていたケースを防ぐため、現在は会社情報の正確さが非常に重視されています。

書類上の情報と実際の状況にズレがあると、申請全体の信頼性が損なわれ審査が不合格になる可能性があります。こうした確認はホームページなどの公開情報から行われます。そのため、登記簿の住所と届出住所が一致していない、工場名や企業名の表記がバラバラである、ホームページの情報が古いままなど、細かなミスも審査でマイナス要因になります。

見られるポイント(例):

  • 登記と届出住所の一致

  • 工場名の表記統一(Web/書類)

ウェブサイトの情報は正式なものに更新しておく


落とし穴⑤:スケジュールの誤解

申請から協議会の承認までには最低でも2か月かかるのが一般的です。しかし、「申請さえ出せばすぐに外国人を雇用できる」と誤解して、準備が整わないうちに採用活動を進めてしまうケースも落とし穴になりえます

特に、面接日程を組んで内定を出した後に協議会加入が「不合格」となってしまうと、相手国の候補者や送り出し機関との信頼関係にも悪影響を及ぼします。あるいは最終的に加入が認められていても、当初想定の採用スケジュールと数ヶ月単位でズレてしまう場合、人材確保の失敗にもつながりかねません。

協議会の審査は通常、申請後2か月近くかかることもあります。さらに書類の修正や差し戻しが発生した場合、さらに2か月の遅れが出る可能性もあります。
あらかじめ余裕を持ったスケジューリングと、審査が完了するまでの間は雇用契約の締結を控える慎重な対応が必要です。


落とし穴に陥らないために

各落とし穴に対応するには、事前準備と正確な情報管理が鍵です。以下の表に、よくある落とし穴とその対策方法を整理しました。

落とし穴 よくあるミス 主な対策
産業分類のズレ ・適切でない分類で申請してしまう
・該当外の産業分類なのに申請してしまう
ポータルサイト・FAQの確認/協議会へ事前相談とうで分類をきちんと判断する
証明不足 製造設備や納品実績の証明が曖昧 写真や書類を審査官視点で整理/説明文を添える
書類不備 書類の抜け漏れや整合性のズレ チェックリストの活用/複数人で確認
情報の不一致 登記・届出・Web上の情報にズレ 整合確認の徹底
スケジュール誤解 審査前に採用活動を始めてしまう 余裕ある計画/審査完了後に採用を進める

それぞれの対策について、以下で詳しく解説します。

業種確認

自社が制度対象かどうか、あるいは自社がどの分類に該当するかは下記の方法で確認できます。

ポータルサイトの検索機能を使う

協議会加入のポータルサイトでは産業分類を判断するための検索ページが用意されています。こちらに製造品目などを入力することで、自社がどの分野にマッチするか?という情報を得ることができます。ポータルサイトのF&Qを見る

協議会加入のポータルサイトではF&Qが公開されています。この中ではどの分類に該当するか?という質問が公開されており、類似のケースを見てみることでマッチする分類を判断することができます。

相談窓口に電話して聞いてみる

ポータルサイトを見てもわからない場合は、相談窓口に聞いてみることも手段の一つです。(この窓口の運営を当社が受託しております)。電話でのヒアリングを通して、マッチする産業分類をご案内させていただきます。

入会申請のポータルサイトで産業分類を検索できる。


ただし、相談窓口含めて確定的な断言はできない、という点は抑えておきましょう。最終的な分類の判断は経産省の判断によるため、相談窓口では可能性の高い産業分類をご案内する形となります。

ただし、上記のような手段を用いても産業分類の判断に自信が持てない際はぜひ当社に直接ご相談ください。これまで30,000件以上の相談対応を行ってきた経験を活かし、事前相談のサービスをご提供しており、産業分類にてついてもアドバイスさせていただきます。製造実態の証明

申請テンプレート中では写真だけでなく、キャプションや製造工程の説明文も添えるましょう。こうした情報が審査官の理解を助けます。

どういった書き方がわからない場合、ポータルサイトにある記載例を参考にすると良いでしょう。

出荷実績や納品書、請負契約書など、定められている複数の資料を組み合わせるのが効果的です。

書類不備の防止

提出すべき書類はまず最初に確認をしましょう。ポータルサイトにも記載がありますし、下記の記事にもこうした提出書類についてまとめています。

【図解でわかる】特定技能〈製造業〉協議会の申請手順と必要書類完全ガイド

【図解でわかる】特定技能〈製造業〉協議会の申請手順と必要書類完全ガイド

提出すべき一覧を確認しつつ作成することで、記入漏れや添付ミスを防止します。またチェックは必ず複数人で行い、形式や内容の整合性も確認しましょう。

会社情報の統一

登記簿、提出書類、Webサイト等公開している情報において会社情報(名称・住所・工場名など)にズレがないよう統一します。

こちらに関しても提出書類同様、複数人の目で確認することが大事です。

スケジュール管理

書類準備から審査完了までに少なくとも2か月の余裕を持ちましょう。再審査により数ヶ月遅延したり、最終的に不合格になってしまう可能性もゼロではありません。

こうしたこともあり、審査完了前に雇用契約を進めると、後からトラブルになる可能性があります。


まとめ:インジェスターで確実な審査突破を

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