
工業製品の製造業において「特定技能」外国人を採用するには、経産省の「製造業特定技能外国人材受け入れ協議・連絡会」(協議会)への入会が必須となります。
株式会社インジェスターではこの協議会運営の相談窓口運営を担っており、これまで30,000件以上の加入申請の相談対応を行ってきました。
こちらのブログではこうした実績に基づいた申請に必要な重要なポイントをご説明していきます。
本記事では、加入申請手順と必要書類について、図解や表を交えて実務的に解説します。
協議会入会の必要性
なぜ協議会への加入が必要なのでしょう?
答えとしては協議会に加入をしないと特定技能の外国人材を雇用することができないからです。
協議会は、外国人材の受け入れに関する制度の適正な運用を目的に、各分野の所管省庁が設置した公的組織です。製造業では経済産業省が所管しており、受け入れ企業が協議会へ加入することは、下記の通り法的な要件となっています。
- 協議会の構成員であることが、在留資格申請の条件となる
- 協議会未加入のままでは在留資格に関する申請が不受理になる
- 雇用契約内容や製造工程の実態について、協議会の審査を受ける必要がある
一方でこの協議会の加入。審査が厳格に行われるため、しっかりとした情報を揃えて申請しないと加入が認められません。高いハードルが設けられています。
このため、入会の前段階からしっかりと準備を行い、必要な書類を揃えることが極めて重要です。
協議会入会の申請フロー【図解付き】
協議会申請から実際の雇用までのフローは下記の通りです。

- 対象製造工程の確認と証拠書類の準備
外国人材が実際に従事する予定の製造工程が、日本標準産業分類における対象分野に該当するかを確認。製品画像、工程フロー、出荷実績等の証拠書類を収集する。 - 必要書類の作成と内部審査(工程表・進捗管理表を含む)
各種証明書類をテンプレートに沿って作成。社内でダブルチェックを行い、書類の整合性や記載漏れを確認。工程表や進捗管理表で準備状況を可視化。 - 協議会ポータルサイトにてオンライン申請
協議会の専用ポータルから申請フォームを入力・必要ファイルをアップロード。申請時に日本標準産業分類や対象製品情報を正確に入力する。 - 書類の精査・不備連絡(修正対応含む)
協議会による提出書類の内容確認が行われ、不備があった場合は差し戻しが発生。迅速な修正対応が求められる。 - 協議会名簿への登録・登録番号発行
審査通過後、企業名と対象分野が名簿に登録され、登録番号が通知される。この番号が在留資格手続きに必要。 - 出入国在留管理庁への在留資格関連申請
登録番号を基に、外国人材について「在留資格認定証明書交付申請」を行う。雇用契約書や支援計画も必要。 - 査証発給・入国後の雇用開始
在留資格認定証明書をもとに査証(ビザ)を取得し、外国人材が来日。就業前に支援計画に基づく生活指導等を実施。
☝️ 申請準備期間も含めると、全体スケジュールは3〜4ヶ月が目安です。
申請の審査だけでも最低1~2ヶ月ほどはかかります。今後の人材採用計画にもとづき余裕を持った対応が必要となります。
入会に必要な書類一覧とその目的
以下は、申請にあたって求められる主な証明書類とその目的です。
提出が必要な事業者 | 書類名 | 内容 | なぜ必要か? |
---|---|---|---|
全事業者 | 製造品の画像と説明文 | 該当工程で製造している製品の画像と、その用途・素材・名称等の説明 | 外国人材が就労する製造工程が、制度の対象範囲にあるかを確認するため |
全事業者 | 完成品の画像と説明文 | 製造品が組み込まれる最終製品の画像および関係性の説明 | 製造品の用途と役割を明確にすることで、製造工程の意義を証明するため |
全事業者 | 製造設備の画像と説明文 | 製造に用いられている機械装置の画像とその仕様・役割の記述 | 実際に製造行為が行われている証拠と、工程の専門性を示すため |
全事業者 | 出荷証憑(納品書・注文書) | 製造品が実際に取引されていることを示す書類 | 該当工程に継続的な業務実態があることを証明するため |
請負製造の事業者 | 請負契約書(該当時) | 他社からの委託で製造している場合の契約書写し | 業務内容・対象製品が制度の範囲内であることを明示するため |
機密保持などで画像提出不可の事業者 | 画像提出不可の理由書 | 製品画像の提出が不可能な場合の理由書 | 機密保持契約等によって提出できない合理的理由を説明するため |
入力テンプレートは協議会の公式サイトから入手可能です。業種ごとに記入例もあります。
書類ごとの詳細解説
製造品の画像と説明文
外国人材が実際に従事する製品の実物画像と、その名称、素材、用途などを記載した説明書です。たとえば、金属部品のような製造品であれば、材質(ステンレスなど)や使用用途(ポンプの一部など)も記述されます。この書類は、対象製造工程が制度の対象分野に該当するかを確認するために必須です。

完成品の画像と説明文
製造品がどのような最終製品に組み込まれているかを示す書類です。例えば、ある機械装置の一部品がどこに使われているかを視覚的・文章的に説明することで、製造品の社会的・産業的な役割が明確になります。

製造設備の画像と説明文
製造品を実際に製造するために使用されている設備(機械、装置など)の写真と、その型番や役割を説明する書類です。例えば、射出成形機やプレス機などの設備写真を提出し、それがどの工程に該当するのかを説明します。これにより、製造工程の実在性と技術的裏付けが確認できます。

出荷証憑(納品書・注文書)
製造品が実際に出荷・取引されている実績を示す書類です。発行日、品名、数量、取引先名などが確認できるものを提出します。これにより、製造が一時的・試験的なものではなく、事業として継続的に行われていることが証明されます。

請負契約書(該当時)
製造を他社から請け負って行っている場合に提出が必要な契約書です。契約書には、製造品の名称、受託内容、契約期間、製造場所などが明記されている必要があります。これにより、外国人材が従事する業務の正当性を示すことができます。

画像提出不可の理由書
製品が企業機密や知的財産権の関係で写真提出が困難な場合に、その理由を説明する書類です。たとえば、NDA(秘密保持契約)に基づく提出制限などがある場合に作成され、代替として工程図や仕様書を添付することもあります。
入会申請とその後の流れ
必要書類や情報を揃えて専用フォームから申請を行うと審査が開始されます。
審査は下記の2段階の構成となっています。
1. 事務局による事前審査
2. 経産省による審査
期間としてはおよそ2ヶ月となっています。ただ内容に不備などがあると再審査になり、その場合さらに2ヶ月などの期間を要する場合があります。加入審査に4ヶ月以上かかる場合もあり注意が必要です。

協議会の審査が完了すると、名簿掲載・登録番号が発行されます。この登録番号は在留資格認定申請に必要となり、これがあることで初めて自社で特定技能の外国人材を雇用することができます。
さいごに
今回は協議会申請のフローの全体像をご説明しました。こちらの申請は下記の注意点があります。
- 申請まえの書類準備にとても手間がかかる (社内工数が大きい)
申請に必要な書類は、写真の掲載や詳細な記述など複雑な内容が求められます。また再申請などで修正の対応が求められることも多いのが現状です。非常に社内工数のかかる手続きである、と言えます。
限られた社内の人手がこの申請に割かれてしまうことで、他の活動がしづらくなる可能性があります。 - 情報に不備があると完了まで4ヶ月以上かかってしまう
初回の申請通過率は非常に低い、といわれています。再申請になってしまうと初回の申請2ヶ月に加え、さらに2ヶ月など4ヶ月以上かかってしまうことに。
「人手が足りないので早く人材を採用したいのに、加入申請が通らないためにいつまで経っても採用できない・・・」という事態になりかねません。
重要な点は、審査のポイントを抑えた申請書類の準備・作成をすること。
こちらの株式会社インジェスターのブログでは、今後もこうした特定技能の製造業協議会申請のノウハウを発信していきます。
また、定期的にオンラインセミナーという形で、申請のポイントを説明するイベントを行います。協議会申請相談窓口の担当者に直接ご質問をいただけます。